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外壁塗装の塗料、塗装工法、外壁材の3つについて理解しましょう

外壁塗装を成功させるために必要な3つの要素をご紹介します。

それらは塗料、塗装工法、外壁材です。

これらを把握することで外壁塗装についての基礎的な知識が身につきます。

初めての方でも安心して外壁塗装に取り組むため、まずは塗料の詳細について見ていきましょう。

外壁塗装の要素1: 塗料について

外壁塗装に必要な知識の1つ目は塗料についてです。

外壁塗装で使用される塗料は主に合成樹脂で成り立っており、含まれる物質により仕上がりの見た目や耐久性が変わります。

アクリル系塗料

色鮮やかで軽量、コスト面でも優れた塗料。

しかし紫外線に弱く、耐用年数が短め

ウレタン系塗料

防水性、耐水性に優れた塗料。

比較的安価でバランスがよく、用途も広い。

塗装の剥がれに強い

シリコン系塗料

耐久性と耐候性に優れ、仕上がりも美しい上質な塗料。

小さなひび割れもカバーできる弾性を持ち、耐用年数も長い

フッ素系塗料

耐久性、耐候性、撥水性に優れるが、汚れやすいという弱点も。

価格は高め。

塗料の耐用年数と平米単価:比較ガイド

以下の比較表では、主要な外壁塗料の種類について、その耐用年数と平米単価を比較します。

塗料にはそれぞれ特性とコストがありますので、希望の外壁塗装を実現するために、この情報をご参考ください。

塗装の費用は、塗装する面積(平米数)に基づいて計算されます。

つまり、平米数×塗料の単価が実際の費用となります。

外壁塗料耐用年数平米単価相場(3回塗り分)特性
アクリル系塗料4~7年1,000~1,200円耐用年数は比較的短いがコストパフォーマンスが高い。
汚れやすく耐久性に劣る。
現在は使用されないことがほとんど
ウレタン系塗料6~10年1,800~2,000円耐用年数は安定。
コストパフォーマンスが高い。
汚れ、色褪せ、耐久性、施工性のバランスが良い。
シリコン系塗料に次いでよく使われる
シリコン系塗料8~15年2,500~3,500円耐用年数に信頼があり、汚れや色落ちに強い。
防カビ性、防藻性など高い性能があり、住宅の屋根、外壁の塗り替えでもっとも多く使用されている
ラジカル系塗料8~15年3,500~4,000円2015年に発売された新しい塗料で、耐用年数に信頼があり、コストも低い
ピュアアクリル塗料12~15年3,500~4,500円耐用年数は高いが、価格も高め。
防水性に優れ、冬場は乾燥しにくいため工期が長くなる可能性あり
フッ素系塗料15~20年3,500~4,500円耐用年数は最も優れ、光沢感と防汚性も高いがコストが高い。
主に商業施設や大きなビルで使用、近年は住宅の外壁用としても使われている
セラミック塗料10~15年5,000~5,500円セラミックの成分が入っており、奥行き、立体感のある外壁に仕上げることができる。
断熱効果や汚れにくい効果もあり
光触媒塗料10~15年5,000~5,500円雨や太陽の光など、自然の力で綺麗にしてくれる効果がある。
外壁のメンテナンスがとても優れているが、外壁塗装工事のコストがかかる
遮熱系塗料15~20年5,000~5,500円熱を反射し、室内を快適に保つ効果があり、省エネやエコにも配慮している。
自治体によっては補助が受けられる場合もある

以上のように、外壁塗装には多種多様な塗料があり、それぞれに特徴があります。

なお、塗料の耐用年数(耐久度)だけではなく、外壁塗装全体の耐用年数を把握しておくことも重要です。

塗料ごとの費用相場

予算の立案に役立てるため、建坪別の塗料の費用相場を確認しましょう。

建坪アクリルウレタンシリコンフッ素光触媒・無機・遮熱・断熱
10坪4~8万7~8万10~14万14~18万20~22万
20坪8~16万14~16万20~28万28~36万40~44万
30坪12~24万20~24万30~42万42~53万60~65万
40坪16~32万29~32万40~55万55~71万80~87万
50坪20~40万36~40万50~70万70~90万100~109万
60坪24~47万43~47万60~83万83~107万119~130万
70坪28~55万50~55万70~97万97~125万139~152万
80坪32~63万57~63万79~110万111~142万159~174万
90坪36~71万64~71万90~120万125~160万179~196万
100坪40~80万71~80万99~140万140~180万199~218万

塗料の選択について

塗料を選ぶ際は、目的に合わせて選択することが重要です。

同じ素材の塗料でも、メーカーによって塗料の特性は異なります。

そのため、選んだ塗料によって塗り替えサイクルが変わる可能性があります。

どの塗料が最適な選択であるかを見極める必要があります。

塗装業者に最善の提案を求めるためには、自身の目的や優先順位をはっきり伝えることが必要です。

塗装を依頼する前に、以下のポイントについて考えておきましょう。

考慮点事例
予算いくらまで出せますか?
塗装の範囲屋根や雨戸、雨どいなども塗りますか?
付加機能遮熱、断熱、防水、光触媒機能などは必要ですか?
どんな色調の外壁にしますか?
修繕箇所特に気になる箇所はありますか?
メンテナンス期間耐久年数はどれくらいを期待しますか?

シリコン塗料:迷ったときのオススメ選択

塗料の種類の中でも、シリコン系塗料は非常に人気が高いです。

これは価格と耐久性のバランスが優れ、優れたコストパフォーマンスを持っているためです。

多くの方々が外壁塗装工事で選ぶシリコン系塗料ですが、その中にも以下のような種類があり、それぞれ仕上がりや特性が異なります。

シリコン塗料の種類特徴
水性1液型耐久性や密着性は油性に比べ劣りますが、
大手メーカーが主に使用している塗料で、ホームセンターなどで売られています。
扱いやすさと環境負荷の低さが特徴です。
溶剤(油性)1液型水性塗料よりも耐久性が高く、現在主流の塗料で、
一般的な塗装店でも最も使用されています。
ホームセンターなどで売られている油性塗料と同等です。
溶剤(油性)2液型使用する際には硬化剤を混ぜる必要があり、
耐久性、密着性ともに水性1液型、溶剤1液型よりもはるかに優れています。
塗装のプロが使用する一級品と言えます。

外壁だけでなく、雨戸や雨どいなどの付帯部分に至るまで、全ての箇所に高品質な溶剤2液型を使用すると、素晴らしい仕上がりが期待できます。

しかし、溶剤2液型は硬化剤の混合が必要となるため、工程が複雑になります。

そのため、外壁に溶剤2液型を使い、付帯部分には溶剤1液型を使用する業者も多いです。

このような事情を把握し、細部にまで注意を払いましょう。

塗料選びは塗装業者の専門知識が必要なため、迷った際は必ず信頼できる業者を選びましょう。

住まいの雰囲気を左右するカラー選び

住まいの美観やイメージを大きく左右するのがカラー選びです。

ここでは、色の基本知識や色の見え方の違いなど、塗料のカラーを選ぶ際のポイントについて説明します。

■カラー選びのポイント

サンプルや色見本と比べ、実際に塗装される外壁の面積は大きく、そのため色の印象が強くなります。

実際に塗料を選ぶ際は、サンプルよりも一段落ちた明度と彩度の色を選ぶと良いでしょう。

住まいの色は、外壁のメインカラーと屋根や雨戸などのサブカラーで構成されています。

これらの色の組み合わせが全体の印象を作り出します。

色のバランスを合わせることで統一感が出ますが、あえて別の色を選ぶことでサブカラーが強調されます。

また、マットな塗料を選択すると、塗り替えてもあまり変化がなく、満足度が低下することがあります。

色の選び方には、「景観に合っていない」「デザインに合っていない」という失敗例が多く、「好みの色」よりも周囲の環境やデザインとの調和を考慮することが重要です。

また、実際に外壁に塗った際にイメージと違った場合、トラブルが起きることがあります。

そのため、塗装業者に試し塗りを依頼し、イメージとの違いを確認することがおすすめです。

■色の「対比」について

色見本で選んだ色が、実際に塗装した後のイメージと異なることがよくあります。

これは、建物周辺の背景や近隣の建物の色影響で、色の見え方が変わる現象、すなわち「色の対比」が原因です。色の対比は主に以下の3つがあります。

色の対比の種類説明
色相対比背景の色に影響されて、色が本来の色とは異なって見える現象です。
同じ色系統だと、背景に近い色に見え、外壁の色が目立たなくなることがあります。
彩度対比背景や近隣の建物の色彩度が低いと、外壁が相対的に鮮やかに見えます。
つまり、背景より彩度が高い色を選ぶと、外壁を色鮮やかに見せることができます。
明度対比背景や近隣の建物の色の明度が低いと、外壁が本来よりも明るく見えます。
逆に、背景の色が明るい場合は、外壁の本来の色が正確に見えます。

地域特性を考慮した塗料選択

外壁塗装を選ぶ際、単に塗料の特性だけを見るのではなく、地域の特性を考慮した選択が重要です。

適切な塗料を選ばなければ、塗装がすぐに剥がれてしまう恐れがあります。

例えば、海に近い地域の建物は「塩害」の影響を受けやすいため、通常の塗料を使用するとすぐに剥がれてしまう可能性があります。

この結果、建物のメンテナンス費用が高くなる可能性があります。

このような場合は、フッ素等の耐久性の高い塗料を選択することが求められます。

地域の特性に合った塗料を選ぶことで、安心して生活を送ることができます。

外壁塗装の種類2: 塗装工法の選択

外壁塗装の種類について理解しておくべき2つ目の重要な要素は、塗装工法です。

外壁塗装は、外壁材や塗装道具により、使用する塗装工法が異なります。

塗装工法の特性を理解することで、職人が何を行っているのかを理解することができます。

3つの塗装工法

刷毛(はけ)工法

刷毛は細かい筆のような道具で、細部の塗装に必要なものです。

ただし、塗装範囲が小さいため、広範囲の塗装には適していません。

細部の仕上げ塗装や微調整の際に使われます。

ローラー工法

ローラーは道具を転がしながら塗装を行う道具です。ローラー部分が長いため、広範囲の塗装に大変有用です。

ただし、隅の部分や細かい塗装には不適合です。

吹き付け工法

吹き付け工法は、塗料を噴射機械に入れて吹き付けて塗装する方法です。

ローラー工法と同様に広範囲の塗装が可能です。

ただし、塗料が飛び散る可能性や凹凸がある部分の塗り残しが発生しやすいため、塗装時には注意が必要です。

塗装と張り替え

外壁塗装には、外壁に直接塗料を塗る方法と、既に完成している外壁材を上から貼り付ける方法があります。

それぞれの方法の特徴を詳しく見てみましょう。

塗装

塗装は外壁に直接塗料を塗る方法です。

一般的には下塗り・中塗り・上塗りの3回塗り(基本は3回塗り)を行い、それぞれの塗料が乾燥する時間を必要とします。

例えば、約30坪の建物を塗装する場合、通常10日から2週間程度の時間がかかります。

塗装の費用は塗料のグレードや塗装を行う職人の人数によって変動します。

そのため、塗装業者によって見積もり金額が一致することはありません。

知識のない消費者に対して価格を高騰させたり、不必要な工程を省いたりする不良業者も存在するため注意が必要です。

地元の信頼できる業者に依頼することで安心できます。

張り替え:既成の外壁材を貼る方法

張り替えは、サイディングボード(窯業系・金属系・木材系・樹脂系など)という、外壁に貼り付けるために作られたボードを使用します。

張り替えの特徴は塗装が不要で、既に完成しているボードを取り付けるだけなので、工事期間が短く済む点です。

また、サイディングボードにはさまざまな模様が施されているものもあり、レンガ風などの質感を持たせたものもあります。

家の外観を大幅に変更したい場合など、張り替えはおすすめの方法となります。

外壁塗装の種類3:外壁材の選択

外壁塗装を行う上で理解しておきたい3つ目の要素は、外壁材についてです。

外壁には多くの種類が存在し、各々に特性があります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

外壁材起きやすい症状特徴
モルタル・ヒビ割れ
・チョーキング
セメント・石灰・砂などを水に混ぜて作られた外壁。
30年以上経った建物に多く使われています。
塗料の効果が切れるとモルタル部分にヒビ割れなどが起きやすくなります。
窯業系サイディングボード・コーキング(シーリング)の劣化
・ボードの反り
・凍害
セメントなどが混ぜられて作られた板状のボード。
寒い地域では凍害によるダメージが生じやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。
金属系サイディングボード・サビ
・潮風に弱い
スチールやアルミなどの金属素材から作られた板状のボード。
金属特有のサビが出ることはありますが、優れた断熱性や防火性を持ちます。
樹脂系サイディングボード・変色
・紫外線に弱い
塩化ビニル樹脂が主な原料の板状のボード。
耐久性や弾力性などが特徴です。
木質系サイディングボード・塗装の効果が切れると劣化しやすい
・チョーキング
木材を用いた板状のボード。
木材特有の風味や色合いを楽しむことができますが、劣化には弱いです。
ALCボード・ヒビ割れ
・チョーキング
コンクリートを軽量化した外壁材で、マンションなどでよく用いられます。
コンクリート壁・ヒビ割れ
・爆裂
セメント・砂などを混ぜて作られた強度の高い外壁。
しかし、防水機能が失われると劣化が進み、凍害などが発生しやすいです。
漆喰・汚れ
・傷がつきやすい
消石灰・砂などを混ぜて壁に塗られる外壁材。
お城や蔵などで使われている古くからの素材ですが、
高機能でメンテナンスフリーな外壁として知られています。

外壁の特性を理解することで、どのような塗装を選択すべきか、また塗装業者の提案が適切かどうかを自分で判断することが可能となります。

まとめ

外壁塗装における塗料選びは、その成功を左右する重要なステップです。

塗料の選択によって家の耐用年数が数年変わる可能性があり、費用も数十万円程度変動することがあります。

それゆえに、外壁塗装に関する基本的な知識を身につけることが重要となります。

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